【 箱庭天国症候群 (A Miniature Garden Syndrome.)
】
お題提供は右記のHP。→SSS(もうないみたいです。)
とある街の、とある家。 ここが末娘である私の居場所。 父は離れの書斎に居る。 母は毎日お仕事に追われる毎日。 長男は天下無敵のアルバイタ。 次男はのんびりまったり社会人。 長女はこつこつ大学生。 次女はいそいそ大学生。 次女の旦那さんはクールな大学生。 二匹の犬に囲まれて毎日わいわい、やってます。
この夢の終わる、その日まで。
01
退屈
末娘の日課。 まず朝起きて窓を開け放ち、隣のアパートをこっそり見ることから始まる。 階下では朝食を作る父。 母はいそいそと仕事の支度。 長男は今年、大学にまた行く。その支度。 次男は仕事。その支度。 長女は飼い犬2匹に御飯を与えてのんびりのんびり。 次女はまだまだ時間じゃないので寝ている模様。 義理の兄(次女の旦那様)も大学に行く準備。 こうやって我が家は動き出す。 末娘の私は、部屋の隅っこでNHKのニュースを見ながらぼんやりぼやぼやと、そんな家族を見つめている。 退屈しのぎに困らない。 それが我が家。この家族。
02 涙のあと
末娘は思う。 夕方のあの太陽は、何故あんなにも切なくなるのだろう。 飼い犬の散歩をして、ふとそう思ったことがある。 きゃんきゃん鳴く二匹の犬を連れて、空のお弁当袋を持ちながら、ふらふら家路に着くのだ。 今日も一日、楽しかったり悲しかったり。 目まぐるしくまわる日常。 こんなにも愛しい日常。 家路についてるはずなのに、こんなにも泣けてくるのは、きっとここが「天国」であるから。
頬を伝う涙を拭うだけの力こそ、この「天国」から抜け出す鍵である。 白い天井を、ぼんやり眺めて思うことは、今は唯それだけ。
03 秘密の出来事
末娘の、数少ない楽しみの一つ。 それが夜のドライブなのだ。 ちらちら輝くテールライト。 静かに唸るエンジン音。 こうやって、助手席に座って、誰かと話す。 それは父とだったり母とだったり、兄だったり別の誰かだったり。 その小さな空間で交わされるちょっとした話は、宝箱の中の小さな宝石だ。 こっそり見せて、大事にまた仕舞う。 運転席で交される、ちょっとした秘密の出来事なのだ。
04 小さな勇気
一歩外に出ること。 それが末娘の私にとって、原子力並みに膨大なエネルギーなのだ。 最愛の人たちに、今のこの思いを告げる勇気が、欲しい。
05 笑顔の力
「ただいまー。」 末娘が帰宅する。 「おかえりなさいー。手、洗ったらおやつあるけど?」 と、父。 飼い犬二匹と父と一緒に、縁側でのんびりおやつを食す。 「ただいまー。」 次女と義理の兄が一緒に帰宅。 いつも二人は仲良し。 夕方。母と長女が買物ついでのばったり出くわし帰宅する。 「今日は長女が腕をふるいまーすっ!」 今夜も父が助けに入りそう。 末娘の私は夕方二匹の犬を連れて近所を散歩。 その途中隣のアパートの前で管理人さんとそこの住人と話す次男に会う。 「あー!こんなところでまったりしてるよー!ぷんぷん!」 「はーいはいはい!帰りますー帰りますよ!」 次男は適当に引き下がる。 コンビニによってアイスを買ってもらってのんびり帰宅した頃に、長男も帰宅。 「めずらしいじゃない!家族みんな揃ってるって!」 にこにこしながら母は言う。 みんな笑顔で、いただきます。 今日もこうやって一日が過ぎる。
06 努力と根性
長男と次男の部屋は一つの部屋を半分に分けていて、しかし次男の「住処」は実はカーテンで遮られていて覗けない。カーテン越しに次男とお話しを、ある日した末娘。 「あー。うー。。もっとこー、なんつーのかなーうーんー。。ま、ほどよ〜く頑張れって。じゃ。」 次男はこう、いつもマイペース。 波立たないので話にならない。 そこで末娘はたまの休みの長男を呼ぶ。 「次男はね、何もお話してくれないの。。くすん。」 長男は、長女の煎れた熱いんだか温いんだかわからなくなったお茶を飲みながらぼんやり答える。 「そういう奴に限って意外と人の見えぬ所で努力をしてて、滞りない根性で常日頃過ごしてるんだよ。」 「そうそう〜。」 二人して笑う。 そんな二人をふーんと眺める。
07 告白
8人一家の中で、末娘が、実は一番苦手としている人物が、次女のダーリンだったりする。 必ず遠目で観察する末娘。 二人の間に近づけない理由は多分、こういうことだ。
「そのバランスが、実は好き」
だから反面眩しすぎて近づきたくても近づけない。 彼が、嫌いなんじゃない。
夕飯時、お茶碗に御飯をよそってもらう。 拭いた食器をしまってもらう。 犬の散歩を手伝ってもらう。 そのときにはいえるかな。 「私、嫌いじゃないですから!」
08 可愛い嘘
次女に学校で仲の良い、たての君の程よい苛めっぷりについて泣きながら相談した末娘。 毎度毎度の事なのでさらっと次男風に流した次女。 「おねいちゃんなんて!おねいちゃんなんてだいっきらいさー!」 そういって口を利かなかった一週間が過ぎた。 その日深夜に帰宅した次女はまだ帰宅しない長女の居ない、末娘だけが寝ている部屋にそっと 荷物を置いて寝る準備をしていた。 枕元に「ごめんなさい、大嫌いは、うそです」のカードと小さなプレゼント。 次女の誕生日にこっそり謝った。 こうして今夜も更けていく。五月のまだ寒い日の出来事でした。
09 怪我
転んで転んでまた転ぶ。 いつも何かに追われるように、あたふたわたわたする末娘。 転んでは怪我を・・それは肘だったり、膝だったり、心だったり・・と様々。 「はい!立ち上がって!」 けれどこうやって手を差し伸べてくれる誰かが、今日も玄関の前にいる心地よさ。
10 友情?
「むむむ・・・」 お買物中の長女と末娘。 「むむむ・・・」 「ここは無難に、ね?」 今夜のおかずを決める。 今夜はお魚。 「・・・」 「・・・ハンバーグ。買っていこうよ・・」 「うんっ。あーよかったぁ、お魚苦手なのよね!」 こうして魚が嫌いな長女の為にチンして食せるハンバーグは籠の中に収まる。 妥協のし具合は「女の友情」
11 眉間のシワ
「むむむ・・・」 今夜は父も母も帰りが遅い。 その為長男が台所に立つ。 「あー、さすが長男。」 「いや、これは嫌がらせだろ。誰とは言わんが。」 まな板の上の「白身魚」とラベリングされたパックを長男と次男はまじまじと見つめる。 「この明らかに深海魚と思しき「白身魚」をさばけと?」 「そのようだね」 長男の眉間にはしわができていた。
12 片思い
夜な夜な書斎のパソコンが光り輝いている。 「これ、い〜よ〜!うん」 次女の顔がにこにこ。 今夜もこつこつゲームをダウンロード中。 そして夜が明ける。
13 囁き
秋風はさやさやと囁く。
庭の草。
揺れる夜風。
ぼんやり光るお月様。
廊下に淡い月明かり。
「お団子、持って行った?」
「ススキは?」
今日は家族で、お月見です。
14 独占欲
いつだって私は、大好きなこの家族を私のものだけにしておきたいの。
たとえそれが「逃避」であったとしても。
15 コンプレックス
すごく、とても愛してた。
けれどそれが裏目にでてしまうのが、わたし。
ねぇ
なんで私がこんなに苦しんでるか、わかる?
それは私が、どうしても他の人に劣ると思っているから。
だってもしも、他の誰とも同じ条件だとしたら
私はきっとこんなに苦しんでいないでしょう?
悔しいくらいの劣等感。
きっと永遠に続くね。
振り向いてもらえないかぎり、ずっと。
16 薬
季節の変わり目は風邪を引く。
今日は学校もお休み。
末娘は風邪の為自宅待機。
虚ろな目で額にかかる手のひらを感じるんだ。
ひんやりするその手は、一体誰だろう?
どんな薬よりも、この額の手が、私の一番の特効薬。
17 おやすみ
そうして今夜も眠りにつくんだ。
ひんやりした夜に寝静まる深夜1時。
明日に備えて。
朝日が昇ったら、また一日が始まるから。
「おやすみなさい」を言って眠ろう。
明日も一日元気でありますように。
18 空腹
たまの休日なのに家族が揃わない。
不規則な父母のお仕事は仕方ないし兄らは大抵家にいないし。
目覚めると、お膳の上には朝ごはん。。。
の、残りがちょろっと。
愛犬とともに、いただきます。
ひとり、もごもご、ちょっと空腹・・。
そんな時は、お友達のたてのとご飯を食べよう。
きっとこの「空腹」も満たされるね。
19 元気の素
お隣のおうちのたての君は同じ学校のお友達。
いつも一緒に学校に行きます。
毎日がアクシデント。
毎日がアドベンチャー。
一日の元気の素も二人で半分こです。
20 泣き笑い
ああ
どうしてだろう?
君といるとこんなにも切ない!
君といるとこんなにも心地よい!
私は今、一体どこにいるの?
父や母や長男や次男、長女に次女に。
ああ
こんなにも至福なのに。
ああ
何故こんなに視界がぼやけるのだろう?
それは、これが夢だから?
それとも現実だから?
21 空
「あ!」
長女と買い物の帰り道、空から何かが降ってきた。
「あ、桜の花が」
長女の手の中にはらりと落ちた淡く薄い花びら。
「もう春なのね〜」
うす雲のかかる高い空をぼんやりと見つめながら長女は呟いた。
22 宝物
これから先に何が起こるのか楽しみで
けれど半分はその何かのおかげで不安に駆られたものだ。
遠出の日。
玄関にあったお守り。
ああ父が作ってくれたものだ。
小さなその袋の中にあるものは、大きな安堵。
コートのポケットにそっとしのばせる。
大事な宝物を詰め込んで目の前の扉のノブに手をかけよう。
23 優しい言葉
それは、遠く、微かに聞こえる「声」
彼が一体私に何を言ってくれているのだろう?
それは、遠く、微かに聞こえた、あの日木霊した「声」
「そばに、いるよ」
24 夢中
「ほら!」
父の手のひらの中にできた小さな角錐。
たった一枚の紙からできた角錐。
小さく折りたたんでは少しずつ少しずつ作っていくんだ。
みんなと一緒に。机を囲んで。笑いながら。
それはもう、無邪気に笑いながら夢中になって作って。
25 後ろ姿
薄らぐ記憶の中であの人の後ろ姿だけぼんやりと見えた。
もう会えないかもしれない。
もう会ってもらえないかもしれない。
滲む景色に焼き付いた、あなたの後ろ姿が。
26 花の名前
たまの日曜。
それでも仕事に行く人がいるもので、この家も少し静か。
庭先で犬と戯れる末娘。
赤い実のなる枝を見てみると
「『愛は、強し』だな」
振り向くと長男が帰ってきていた。
「玄関で待ち人がここぞとばかりに待ってるぞ!行ってやれー」
ひらひら手を振りながらそう言った。
「愛は、強しかぁ」
赤い実をもう一度見た。
真っ赤に色づく赤い実の名前は一体なんだったか?
そんなことをぼんやり考えながら玄関に向かった。
27 裏切り行為
次第に家に誰もいなくなるのは気のせいではなくなった。
確実に孤独。
ああ!
私の家が!私の家が・・・!
28 束縛
There want to be me with you by me.
I do not want to separate you.
The tying hand is not separated!
I want to connect me with someone.
I want the world connected with me!
ここは私の愛した世界。
絶対に、離さない!
29 指先
ベッド越しに、あなたが居る。
あなたが私の髪に触れて。
触れた指先が、相変わらず冷たいね。
もう、春になるのに。
30 バスタブ(浴槽)
浴槽に張った湯の中に顔をつける。
滲む世界を見つめる。
静かな、この滲む世界。
音も視界も滲む。
31 不器用
「なんでみんないないの?」
「そんなことはないだろう?」
「嘘だ。誰もいないよ」
「そんなことはないでしょう?あなたが話しかけていないだけでしょう?」
居間には皆いた。
皆普段どおりのことをしている。
「不器用なんだな、お前は。何をそんなにびくびくしてるんだ?俺たちはここにいるだろ?」
32 孤独な時間
そして今日も一人。
あんなにうるさかった犬も、いない。
33 同情
「へー。お前んちはいつもいないんだな!」
近所の男の子は言い放った。
「まぁ俺んとこもそんな感じだけどね。」
「そうなんだ・・・」
「まぁ気にするなって。俺たちは同じ者どうしさ」
34 隠しごと
次男に思い切って聞いてみた。
「ねぇ。なんでみんないないの?」
カーテン越しに
「いないことなんてないだろ?お前が寝てる時間に俺たちが仕事から帰ってくるから。すれ違うんだよ」
「じゃあどうして犬もいなくなったの?」
「さぁ。それはわからない。」
35 一緒に
「なぁ」
「何?
「一緒に帰ろうか?」
36 咳
咳払いする音がする。
誰の?
咳払いをする人なんて、この家に、いない。
咳払いなんて・・・「父」みたいだ・・・
37 恐怖心
今日も誰もいない。
どうして?
どうして置いていくの?
どうして私だけ・・・。
どうして・・・?
黒い染みが、じわじわ広がっていく。
じわじわと、確実に。
38 キス
Please kiss me.
Then, I swear to wait without crying.
39 手料理
「わぁ!」
お膳の上にはケーキやらなにやらがたくさんあった。
「だって今日はあなたの誕生日だものね!」
暖かな蝋燭の火が、じわじわと心に染み渡る気がした。
40 永遠
そうよ。
これは永遠に続くって決まってる!
41 歌声
遠い声が
歌声に乗って。
まるでそれは賛美歌のように。
流れるように聞こえる。
「一緒に、帰ろう」と。
42 ケンカ
誰もいないことに腹を立てる末娘。
「どうして!どうして誰もいないの!?」
「そんなことは・・・」
泣き腫らした目で見つめたのは、一体誰だったのだろうか?
「私が居なくなってもみんないいんでしょ!?なら『本当に消えてしまう』から!」
「 !」
私を呼ぶ声がする。
けれど、振り向いたりなんか、しない
こんな世界、いらない!
玄関の扉を勢いよく、開いた。
43 光
目の前には、水の張ったコップを倒したように、光が溢れ、零れていた。
44 ベッド(布団)
「どうして・・・どうして・・・」
ベッド上で、もうこれでもかというくらい、泣いた。
濡れるシーツを握り締めて。
遠のく意識を定めようとしても、もう定まらなかった。
45 口癖
「もう、いいよ。大丈夫だから」
それが彼女の、口癖。
それももう、あと何回聞けるのだろうか
46 幸せの予感
「ほら!待ってたんだよ!」
隣のオトコノコが迎えに来てくれた。
「どうしてここにいるのがわかったの?」
「約束したじゃない?一緒に帰ろうって」
47 昔話(過去話)
僕の彼女、さくらには、夢がありました。
それは他人から見たらちょっと変かもって思われるような、そんな「夢」でした。
勿論その夢は一攫千金ではあり、そうそうなれるものではありません。
彼女の両親はとても反対しました。
そんな彼女は、それでも夢を諦めず、努力を重ねていきました。
しかし彼女は次第に疲れていきました。
痩せ細る彼女は、変わっていきました。
ガマズミという小さな赤い実のなる枝を見ては、とても嬉しそうに笑い、誰かに話しかけているのです。
とうとう彼女は、壊れてしまいました。
僕の知っている彼女は、遠い世界に、行ってしまいました。
出会ったあの時と同じように笑うのに、笑いかける相手は、もうこの世界の住人ではありません。
彼女は、遠い世界に行ってしまいました。
今も彼女は、ベッドの上で
時折笑い、時折泣きながら
僕の知らない世界で、生きています。
48 夢
ある日、末娘に向かって
「さくら。もう君はこの世界で生きてはいけないよ。もう戻りなさい。君を愛しく思う人がいるのに、何故気がつかないの?」
それが長男だったのか、次男だったのかは、今でもわかりません。
49 すべて
「たての君ー。」
遠くの方でそう呼びかえる声がした。
「ああ。お久しぶりです。」
遠くの方で自分のことを呼びつけたその人は、彼女のアルバイト先の先輩だ。
忙しい合間を縫って、月に一度必ずやってくる。
「今日も至って変わらずです。相変わらず目覚めないんですよ。完全に眠り姫ですね」
「そうかぁ・・・みんな心配してるんだよね。」
今日はこれから夕飯らしく2つ先の駅で、やはり同じアルバイト先の人と
「ラーメン食べに行くんだけど、くる?」
「いや、これから仕事に戻るんで。今の時期色々忙しいんですよ」
それから二言、三言話して帰っていった。
彼女が眠って目が覚めないまま、一体何日が経ったか、もうわからないくらい時間が経った。
50 ハッピーエンド
目が覚めると、そこは光で溢れていた。
「そっか、私には・・・」
一緒に帰ってくれる人が、いた。
「・・・今日もきっと目覚めないですよーそんなに大勢でこられてもねー」
遠くの方で看護士の人が諭すように言っている。
「ほら・・・・ね?」
扉が開く。
ああ!
帰ってきてくれた!
私の愛しい人たちが!
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